アパートやマンションのオーナー様にとって、家賃滞納は経営に直結する深刻な問題です。電話をしても出ない、支払いの約束も守られない状態が続くと、金銭的な損失だけでなく、精神的なストレスも大きくなります。「家賃を払わないなら、今すぐ出て行ってもらいたい」とお考えになるのは当然ですが、絶対にやってはいけないことがあります。
どれだけ家賃滞納が続いていたとしても、オーナー様が「勝手に部屋の鍵を交換する」「無断で入居者の部屋に入り、荷物を運び出す」といった行為(自力救済)は、法律で固く禁じられています。これを行うと、住居侵入罪や器物損壊罪といった刑事責任を問われたり、逆に入居者から損害賠償請求をされたりするリスクがあり、立場が逆転してしまいます。
「信頼関係の破壊」 注意が必要なのは、家賃滞納があれば直ちに契約解除が認められるわけではないという点です。日本の法律(借地借家法)では入居者の居住権が手厚く保護されており、裁判所は、貸主と借主の間の「信頼関係が破壊された」と認められる場合にのみ、契約解除を有効と判断します。裁判実務では、一般的に「3ヶ月分以上」の家賃滞納が、信頼関係破壊の一つの目安とされています。1~2ヶ月の滞納では、直ちに法的な解除が認められるとは限らないため、計画的な対応が必要です。(ただし、滞納期間が短くても、何度も滞納を繰り返している等の事情があれば、解除が認められる場合もあります。)
滞納が発生した場合、入居者本人への督促と並行して、連帯保証人や家賃保証会社へも速やかに連絡することが重要です。家賃保証会社を利用している場合は、契約内容に基づき代位弁済(滞納家賃の立て替え払い)を請求します。連帯保証人がいる場合は、連帯保証人からの支払いや、入居者への説得を試みることで、訴訟前に解決できる可能性もあります。
【重要・民法改正】連帯保証人の「極度額」について:2020年4月1日以降に締結(または更新)された契約で、個人が連帯保証人になっている場合、保証の上限額(極度額)を契約書に明記していなければ、その連帯保証契約は無効となります。滞納発生時には、まず契約書を確認してください。
入居者に退去してもらうには、必ず法律に基づいた正式な手続きを踏む必要があります。
内容証明郵便による催告:まず、「〇日以内に滞納家賃を支払わなければ、賃貸借契約を解除する」という旨の通知書(催告書)を、証拠が残る内容証明郵便で送付します。この際、支払期限として1週間程度を設定するのが一般的です。
明け渡し請求訴訟の提起:期限までに支払いがない場合、契約は解除されたとして、裁判所に「建物明け渡し請求訴訟」を提起します。この裁判では、建物の明け渡しと同時に、滞納している家賃や、退去完了までの賃料相当損害金の支払いも併せて請求します。
勝訴判決の取得(または和解):裁判でこちらの主張が認められれば、明け渡し(および滞納家賃等の支払い)を命じる判決が出ます。実際には、裁判の途中で「和解」が成立することも少なくありません。「〇月〇日までに退去する」「滞納分を分割で支払う」といった内容で合意ができれば、判決を待たずに解決できます。和解調書は確定判決と同じ効力を持つため、約束が守られなければ強制執行に進むことができます。
強制執行:判決(または和解)が出ても入居者が任意に退去しない場合は、裁判所に強制執行を申し立てます。強制執行は申立て後すぐに行われるわけではありません。まず、裁判所の執行官が現地に赴き、入居者に対して明け渡しの期限(通常は約1ヶ月後)を通知する「明渡しの催告」を行います。この期限までに退去しない場合に初めて、執行官の立ち会いの下で強制的に退去させ、荷物を運び出します(「断行」)。
明け渡しが完了しても、滞納家賃の回収が残ります。判決や和解調書があれば、入居者の給与や預貯金を差し押さえることが可能です。2020年の民事執行法改正により、裁判所を通じて金融機関などから債務者の財産情報を取得する手続きが強化され、以前よりも債権回収の実効性が高まっています。また、家賃の請求権は5年で消滅時効にかかります。長期間放置せず、早めに法的手続きで時効の完成を阻止することが重要です。
これらの法的手続きをご自身で行うのは、訴状の作成や裁判所への出廷など、時間も手間もかかり、非常に煩雑です。弁護士にご依頼いただければ、まず「弁護士名」で内容証明郵便を送付します。これにより、オーナー様の本気度が伝わり、訴訟前に任意で支払いや退去に応じるケースも少なくありません。訴訟に移行した場合も、すべての手続きを弁護士が代理人として迅速かつ適法に進めます。最終的な強制執行の手続き(執行官との打ち合わせ、荷物搬出業者の手配など)や、その後の滞納家賃の回収(差押えなど)も、オーナー様の負担がないようサポートいたします。
法的手続きによる明け渡しは、スムーズに進んでも、弁護士への依頼から強制執行完了まで半年程度かかることも珍しくありません。家賃滞納は、放置する時間が長引くほど損失が膨らみます。
家賃滞納や入居者の退去でお困りのオーナー様は、お一人で悩まず、お早めに当事務所へご相談ください。迅速かつ法的に適切な手続きで、オーナー様の財産をお守りします。